無駄のない機能美、鉄骨家具

studio caravan（スタジオ・キャラバン）は埼玉県所沢市にある鉄骨家具と雑貨のお店。

鉄骨家具は店主自らがデザイン・制作を行っている。
注文はオーダーメイドや展示された家具を元にカスタマイズが可能で、お客様一人一人に合わせた家具作りを行っている。

特徴はシンプルを突き詰め削ぎ落とされた機能美、
そして新しくとも使い込まれたような風合いと温もりを感じさせる家具。
北欧家具に影響を受けたというデザインは洗練されている。

雑貨はお店の家具にあうものであれば、ジャンルに拘らず北欧、アジア、和といったテイストの物も取り扱っている。

このお店を作ったのは店主の岡田一さん。
家業である鉄工所にお店を併設した。
お店の建物は電気の配線以外、骨組みから壁の漆喰塗りまでほぼ手作りだそうだ。
オープンして5年になる。

「紆余曲折です。」
という岡田さんの経歴を教えて頂いた。

“バンド活動と旅に明け暮れる学生生活を送った後、秘境旅行専門の旅行会社に入社。
数年の勤務の後、退職。チベット・シルクロード・ガンダーラなどを巡る一年の旅に。
帰国後、フリーランスの旅行ライター、飲食店、インテリアショップなどの職を経て、現在に至る。”

家具作りを始めようと思ったのは前職のインテリアショップに努めていた頃からの思い。

仕事が休みの度に、お店めぐりをするほどインテリア・雑貨が好きという岡田さん。
前職のインテリアショップで接客、販売、インテリアのコーディネイトなどの仕事をしていくなかで「自分で作りたい」というモノづくりの原点への欲求が湧いてきたという。

家業が鉄工所だったこともあり、いつしか「鉄で家具が作りたい」という思いに発展していった。

「本来であれば最初から家業を継ぐべきだったのかもしれない。」
という彼は「鉄の家具」というモノづくりへの純粋な興味から、会社員を続ける傍ら自己流で鉄骨家具の製作を始める。

それが10年前の事。

最初は趣味的に自分の物や友人に頼まれた小物を作るところから始めたが、
「こりだすと止まらなくなる性格」という岡田さんは、ほどなく家具作りに熱中するようになった。
そこから5年後には冒頭に紹介したstudio caravanをオープンするまでに至る。

鉄骨家具への想い

デザインの影響を受けたのは北欧家具のデザイナー達。
特にシンプルさと機能美をもつハンス・ウェグナーの家具に惹かれたという。

日本や中国といった東洋のデザインに影響を受けた北欧家具のデザイナーも多い。
彼らが作り出す、贅肉を削ぎ落したような機能美と、そこに北欧の美意識が掛け合わされたデザインに東洋的な、あるいは禅的なものを感じるという。

岡田さん自身も家具を作る際は「シンプルに、シンプルに。」と想いを込めながら作っている。
しかしシンプルさを目指す引き算のデザインは、ごまかしが効かなくなる難しい作業だ。
毎回、毎回、そこで壁が出てくる。山を越えるのに苦労するという。

でもそれは一つ一つ丁寧に家具作りをしているからこその悩みなのだろう。

コンセプト

家具作りの工房という意味で studio 、かつてラクダの背に乗り、西へ東へと文物を運んだ砂漠の隊商・キャラバンのように、自分の脚と嗅覚を頼りに、世界のものを集めたいという思いを caravan という言葉にのせ、お店の名前を studio caravan とした。

その思い通り、店内には岡田さんが作った鉄骨家具と厳選された雑貨が並ぶ。
雑貨は当初、北欧雑貨を中心に置いていたが、今は自分の作っている鉄の家具の世界観に合うものならば、国にこだわらず揃えている。

買い付けは店主の岡田さん自ら、北欧のデンマーク、スウェーデン、フィンランドや他ヨーロッパの国々、タイやアルゼンチンと様々な場所へ行く。

そうして買付けられたモノたちが店内を飾る光景は、
「新しくとも使い込まれたような風合いと温もりを感じさせる」という岡田さんの家具のコンセプトにマッチしていて、とても心地よい。

ギャラリー

終わりに

学生時代はオリジナル曲で活動するほどバンドに明け暮れ、
その後は旅行会社、旅行ライター、飲食店、インテリアショップと渡り歩き、
行き着いたのが、鉄骨家具職人。

こうしてみると、心が感じる気持ちよさを大切に生きてきたのではないだろうか。
そして同時に「何かを生み出したい」という渇望みたいなものを抱えていたのではないだろうか。

「昔は音楽一辺倒だったのですが、今は家具やインテリア以外のことは何も考えれませんね。それ以外に表現したいものが無いんですよ。」

はにかみながらそう言う岡田さんは、これからも心の向くままに、自分の世界を突き詰めていくのだろう。

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